ハチミツとクローバー 3つ目の答え 考察
みなさんだいたい解答は同じなんですけど
その先の考察までいってるサイトをなかなか見ないので、自分で書くことにします。
羽海野チカ先生の『ハチミツとクローバー』
これ以外にもめちゃくちゃ名言が多くて、ハチクロは人生だと思ってます。めっちゃおすすめ。
全10巻のハチクロの中でも屈指の名言だと思うのが、『3つ目の選択肢』
以下、『ハチミツとクローバー』の盛大なネタバレを含みます。ご注意ください。
「『努力する』か『諦める』か どっちかしかないよ
人間に選べる道なんて いつだってたいていこの 2つしかないんだよ」
「──けれど僕は この時ひとつ 嘘をついた
3つあったんだ 選択肢は ほんとうは
──でも
2つしかないと信じていた方が 道はひらけるから
3つ目の答えを 僕は
口に しない」
羽海野チカ『ハチミツとクローバー』5巻より引用
これ、3つ目の答えというのは
「努力する、諦める以外の方法」であり、かつ「(選んでしまったら)道がひらけない、閉ざされるもの」ということで
『現状維持』『なあなあにする』『何もしない』あたりのことだと推察できるんですが
問題は
花本先生が今までのどの経験から、この3つ目の答えは道を閉ざすと感じたのか。
私は、これ本編の壮大な伏線だったのでは、と思ってます。
リカさんのこと?
でも、先生はリカさんに対して、自分は以前の生活をやめて諦めた代わりに真山をリカさんのもとでバイトさせるという努力をしてますよね。
なあなあにはしてないと、私は思います。
(このあたりは個人の感じ方にもよると思うので、真山に託したことを『なあなあにした』と感じる方もいるかもしれません)
先生の中で1番重い挫折体験は「親友だった原田さんの死」だと思う(というか、本編では美大入学時の挫折とそれくらいしか先生の過去エピソードがない)のですが
これではないということは
『3つ目の答え』は伏線でもなんでもなく、
羽海野先生自身が読者に3つ目の答えを選んで欲しくなかったから明示しなかっただけ?
…あるじゃないですか。
花本先生がなあなあにしていたこと。
『登場人物全員片想い』というキャッチコピーがつけられていたハチクロで
あゆが真山の自分への行動の奥にあった感情に気づくなんて最高の場面で、張られてた伏線が。
いとこの娘である、はぐちゃんへの恋心を
先生は何年もずっとなあなあにしてきて
そして最終的に、本作のヒロインであるはぐちゃんは、先生を選ぶ。
この展開に衝撃を受けた人、多かったんじゃないでしょうか。
何を隠そう、私も衝撃を受けた一人です。
でも、5巻の段階で「先生が、恋心を『なあなあにしていた(いる)』」って伏線が張られてたと解釈すれば
あのラストも比較的すんなり受け入れられませんか?
先生の恋心。
傍目には父娘にしか見えない年齢差の、いとこの娘への恋愛感情。
実際はぐちゃんへの関わり方も、お父さんの代わりに運動会に参加したり、おねしょのシーツを干したり…完全に父娘のそれ。
努力するでもなく
諦めるでもなく
先生は、はぐちゃんと『今のままの関係の維持』を、ずっとしてきていました。
「(恋愛感情との)境目は説明しようと思えばできるけど、恥ずかしいからダメ」と先生は言っていたので、いつからかはわかりませんが
それなりに長い期間、はぐちゃんへの恋心をなあなあにした状態で片想いしていたと思われます。
しかも、はぐちゃんの恋の相手候補(森田さんと竹本くん)も出てたにも関わらず。
嫉妬はしてましたけどね…(笑)
『3つ目の答え』のシーンに話を戻すと。
先生が『努力するか諦めるか(もしくは3つ目の答えか)』を選ぶ、と直接的に言っていたのは、あゆにプロポーズした幼なじみたちでした。
彼らは、『諦める』を選択したものと思われます。
では…彼らと重なっていた、あゆはというと。
しばらく、『努力する』も『諦める』も選んでないんですよね。
なあなあにしてる。
真山の気を引くために野宮さんを利用したり
『ずっと好きでいつづけて自分の気持ちを思い知らせたい』と思っていたり。
最終的に、真山への執着や意地みたいなものよりも
野宮さんの存在が大きくなって、やっと前に進みます。
この、野宮さんルートに踏み出す前の、不毛な片想い。
先程考えていた「先生のはぐちゃんへの恋心」と、少し被りそうな気はしないでしょうか?
勿論、シチュエーションはだいぶ違うのですが。
なんて、秋の夜長に少し考えていました。
やっぱりハチクロは人生。